男はつらいよ 第42作 ぼくの伯父さん
NHK-BSで放送されている、男はつらいよ あゝ失恋48連発の第42作。
12/9/06の放送は、「第42作 ぼくの伯父さん」。平成元年=1989年12月の公開。
「ゴクミ・シリーズ」の第1弾。
今回は、「満男」( 吉岡秀隆 )と、「ゴクミ」こと、後藤久美子、演じる「泉」との恋物語。そこに寅さんの恋愛指南が展開され、一方、諏訪家(博、さくら、満男)での親子関係・家族模様が描かれている。
今回は、「さくら」( 倍賞千恵子 )も大活躍です。
壇ふみ、夏木マリ、尾藤イサオ等も出演しています。
物語は、満男が高校の後輩である「泉」に想いを寄せ、勉強も手に付かず、親子喧嘩した上で、家出して、今や離れ離れになった「泉」のいる佐賀まで、追いかける形。
冒頭 諏訪家でのやりとりが面白い。良くある家庭の状況ではないだろうか。長いセリフだが、「続きを読む」に引用しています。
題名通り、「ぼくの伯父さん」、寅さんと満男のやり取りも、粋で、ぐっとくる。
まず、酒の飲み方を指南する寅さん。アリア風の説明が粋で良いですなぁ。
寅さん 「何だ、おい。酒の飲み方から教えなきゃなんないのか。」
満男 「どうやって飲むの。」
寅さん 「どうやって? いいか。先ず、片手に盃を持つ。酒の香りを嗅ぐ。なぁ。酒の臭いが鼻の芯にじーんと染みとおった頃、おもむろに一口飲む。さぁ、お酒が入っていきますよ、ということを、五臓六腑に知らせてやるんだ。なぁ。そこでここに出ているつき出し。これを舌の上に・・ちょこっとのせる。これで酒の味がぐーんと良くなるんだ。それから、ちびりちびり・・だんだん酒の酔いが身体に染み通っていく。それを何だお前。かけっこをしてきたやつが、サイダーを飲むみたいに、ぐぅーっと飲んで。胃袋が驚くよ、それじゃ。判ったか。」
続いて、親にも言えない悩み事、恋の悩みを聞き出す寅さん。さすが、寅さん、格が違う。
寅さん 「恋をしているのか、お前は。へぇーー。この間まで、飴玉一つやれば喜んで飛んでくるガキだと思っていたのに。はぁー。恋をする歳になったか。」
満男 「違うよ、伯父さん。俺のは、恋なんかじゃないよ。」
寅さん 「ほぉ、どう違うんだ。」
満男 「だって、恋というのは、美しい人を美しく思うことだろう。」
寅さん 「その通り。」
満男 「でも俺のは、ちっとも美しくなんかないよ。不潔なんだよ。・・だって俺、ふと気付くと、あの子の唇とか胸とか、そんな事ばっかり考えているんだよ。俺に女の人を愛する資格なんか無いよ。」
寅さん 「お前は正直だな。偉い!さすがは博の息子だ。」
満男 「俺のどこが偉いんだよ。調子のいいこと言うなよ。」
寅さん 「まぁ、聞け。・・俺はな、学問というものが無いから上手いことは言えねぇけど、博がいつか俺にこう言ってくれたぞ。『自分を醜いと知った人間は、決してもう醜くねぇ』って。な、・・考えてみろ、田舎から出てきて、タコの経営する印刷工場で職工として働いていたお前の親父が、三年間、じーっと、さくらに恋をして、何を悩んでいたか。今のお前と変わらないと思うぞ。そんな親父を不潔だと思うか。」
満男 「やっぱり伯父さんは、苦労してんだなぁ。」
寅さん 「すこーし、気持ち、楽になったろ。」
この「自分を醜いと知った人間は、決してもう醜くねぇ。」は、第34作「寅次郎真実一路」からの引用でもある。
「泉」が世話になっている佐賀の家で、「泉」の叔父さんになじられた時に、寅さんが毅然として言うセリフ。ここでも寅さんのダンディズムが出ている。
「私の様な出来損ないが、こんな事を言うと笑われるかもしれませんが、わたくしは、甥の満男は間違ったことをしていないと思います。馴れない土地へ来て、淋しい想いをしているお嬢さんを慰めようと、両親にも内緒で、はるばるオートバイでやってきた満男を、わたくしは、むしろ、良くやったと褒めてやりたいと思います。」
小野小町伝説 「深草の少将」や、舞台となった佐賀・鍋島藩の歴史、「葉隠」の話しが、散りばめられていて、観る人の素養が試される。
もちろん、いつもの「笑い」のシーンも健在。
満男が家出をした時のシーンは、大笑い。
博 「馬鹿!親不孝の『孝』の字が間違っている!」 ( 「旅に出ます。親不考をおゆるし下さい。御両親様。」 )
満男が帰って来ると聞き、町内の皆が集まってくる。料理、お酒、拍手と賑やかな柴又の町内の皆。そこへ寅さんが一人、旅先からの電話が入る。賑やかな柴又の風景との対比で、哀しい。 「旅をすれば、人間誰でも、賢くなる。ま、中にはそうじゃないやつもいるけどね」 寅さん自身、自分言うセリフでもある。
この「ゴクミ・シリーズ」の続き、人が成長していく姿が期待される。
満男と両親の関係が、良くある家庭の状況として、上手く描かれている。そのシーンから引用。
子供は、先ず母親と話しをする。
満男 「父さんに話してくれた、旅行のこと。」
さくら 「自分で話したらいいでしょう。あたしは、あんたの通訳じゃないんですからね。」
満男 「俺が言ったって、反対するに決まっているだろう。」
さくら 「満男、手紙来ているわよ。」
満男 「どこ?」
さくら 「及川泉さん、良く来るわねこの子から。」
満男 「何で、いちいち俺の手紙しらべるんだよ。」
さくら 「いいじゃないの。可愛い封筒だから、つい、名前見ることだってあるでしょ。そしてら、卒業アルバムに載っていた綺麗な子の名前だから、この子から来たのかって。」
満男 「そんなことまで干渉するなよ!俺のプライバシーなんだからな!」
さくら 「満男!何て言う口のききかたをするの!あんた浪人しているから、あたしや父さんがどんなに気を遣っているか、あんたにはわかんないの!」
満男 「気なんか遣わないでいいよ!」
さくら 「じゃ、どうすればいいの、口きかなければいいの!」
満男 「自由にさせてくれりゃいいんだよ!」
さくら 「させているじゃないの!」
満男 「させてなんかいないよ!俺は監視されているんだからな、朝から晩まで。」
さくら 「あー、あきれた。」
満男 「俺の自由なんで、猫の額ほどだよ。」
さくら 「なんて事いうのよ!」
そこへ「博」が仕事から帰ってくる。
博 「いい加減にしろよ。表まで聞こえているぞ。」
さくら 「博さん、聞いて。この子ったらね、あたしたちに監視されているって・・満男!待ちなさい!」
博 「揉め事は、あとからにしてくれよ。俺は疲れて帰ってきてるんだから。」
さくら 「ね、そんな事言わないで、ちゃんと話し合ってちょうだいよ。いい機会なんだから。」
博 「母さんに謝れ。お前が悪い。」
満男 「何で言い訳も聞かないで、そんな事言うんだよ。」
博 「最近のお前の態度は問題だぞ。」
満男 「俺が何したって言うんだよ。」
博 「自分に聞いてみろ。先、風呂入る。」
満男 「あー、むかつくなー。」
さくら 「満男!あんたがそういう態度ならね、もうご飯なんか作ってあげないからね!・・・もう・・・あ、腹が立つ!」
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